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欧米並みの残業時間に、36協定特別条項ってなに?

(写真=Zoom Team/Shutterstock.com)

長時間労働と通称「サブロク」協定

昨年末に社会を揺るがすショッキングな出来事として報道された、大手広告代理店での過剰な時間外労働による若手社員の過労自殺事件。これが引き金になり、改めて長時間労働が社会問題としてクローズアップされました。こうした社会的要請を受けて、労働環境を考える動きも活発化しています。

労働時間にまつわるこうしたニュースでよく耳にするのが、通称「サブロク」協定(労働基準法36条)です。実際に、どのような事柄を定めているものなのでしょうか。時間外労働に関する法律の仕組みを簡単にひも解いてみましょう。

まず企業では、従業員に法定時間を超えて労働させる場合、労働基準監督署に36協定を提出しなければなりません。この36協定では、労働者に時間外労働をさせる上限の時間が定められており、1週間で15時間、1ヵ月では45時間、1年間で360時間などとなっています。

ただ繁忙期などの対応として、この36協定に特別条項を付帯すると、法定の時間外労働時間の上限を超えて働かせることが可能になります。

前述の通り、1ヵ月の時間外労働の上限時間は45時間ですが、例えば70時間まで延長することができる特別条項を付帯すると、70時間までは時間外労働をさせることができるようになるのです。

36協定で、労使が締結できる時間外労働の上限時間は定められているのですが、特別条項を付帯する場合、上限時間についての規定がないといえます。この点が時間外労働では問題視されていて、理屈上では社員にいくらでも残業させることが可能となってしまうのです。

海外と比べ長時間労働者が多い日本の実情

現在、日本国内の人口は減少傾向をたどり、労働力の不足が社会問題として顕在化してきています。そうした中で、仕事と生活を両立させながら、能力をフルに発揮できる環境づくりとして、ワークライフバランスの考え方が企業でも重要視されるようになりました。

厚生労働省が発行する「平成27年版厚生労働白書 – 人口減少社会を考える-」でも、長時間労働と少子化の問題が指摘されています。

同白書では、日本は諸外国に比べて、長時間労働者の割合が非常に高いことが報告されています。国際労働機関(ILO)による、各国における週49時間以上の長時間労働者の割合を表したデータ(2012年)が紹介されていますので、そちらの数字をご紹介しましょう。

週49時間以上の労働者の割合は、日本は男女合計で22.7%となっています。これに対しスウェーデンは7.6%、ドイツが11.2%、フランスは11.6%、英国は12.0%、アメリカが16.4%と、日本の長時間労働者の水準が高いことがうかがえます。
さらに男性のみで見てみると、日本は31.6%、スウェーデン10.7%、フランス16.1%、ドイツ16.4%、英国17.3%、アメリカ21.8%と、長時間労働の傾向がより顕著になっています。

出生率が回復したフランスなど欧米諸国での施策をみると、保育サービスの充実や、仕事と家庭の両立支援を図る政策が少子化対策では重要と考えられているようです。我が国においても長期的な労働力確保の施策の一つとして、長時間労働問題の是正がクローズアップされています。

労基法改正で残業時間の上限規制が決まる?

昨今、話題になっているのは残業時間の上限規制についての議論です。

去る2017年3月13日には、働き方改革の一環として、経団連と連合が残業時間の上限を最大で月60時間(年間720時間)までに制限するという、残業時間の上限規制について合意したというニュースが報道されました。

日本国内では、労働者の過重労働や過労死の問題が深刻化し、こうした劣悪な労働環境を起因とする労災請求件数が、年々増加しているという実情を反映した動きともいえるでしょう。また、政府は早ければ2017年中に、労基法改正案を国会に提出するのではという見方も強くなっています。

このような時代の潮流は、事実上、これまでは無制限に残業時間を増やすことができた「36協定」も見直され、制限されることになると思われます。

時間外労働の上限規制は今後、企業社会にさまざまな影響を及ぼすものと予想されます。例えば、大手に比べ所得が低い中小企業では、残業手当をもらうことを前提に働いている実情もあり、それが長時間労働につながっていたという面も見逃せません。

このため残業時間の上限規制とともに、給与水準の改善やセーフティネットの強化、企業における人事制度の見直しなども重要になってくると考えられます。

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