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中小企業を襲う人材と労働の「5重苦」とは? その3 残業させられない

(写真=PIXTA)

法律や労働基準監督署など、行政が労働者保護に向けて、徹底的に長時間残業を排除しようとしています。2016年度からは労働基準監督署の立ち入り検査対象が増えるなど、社員に長時間の残業をさせることで、厳しい処分を受けかねない状況に直面する可能性が高くなりました。こうした「長時間労働の是正」の動きは企業にどのような影響をあたえるのでしょうか。

働き方改革の柱は「長時間労働の是正」

政府による働き方改革で「長時間労働の是正」が大きなテーマになっています。「多くの労働者が長時間労働に従事していることと、過労死や精神的なハラスメント(嫌がらせ)による自殺が発生し続けていることを懸念する」と、2013年には国連から日本の常態化した長時間労働に対する是正勧告を受けています。

しかし、現在でも長時間労働によるさまざまな社会問題が浮上しています。たとえば、自殺者はピーク時の3万人は切ったものの2015年でも約2万4,000人おり、先進国では高い水準となっています。また、精神疾患者の増加や少子化などの問題も浮上しています。これらの問題を受け、政府は長時間労働削減推進本部を設置し、2016年末に「過労死等ゼロ」緊急対策を実施。企業向けに新たなガイドラインを定め、労働時間の適性把握を徹底するなど、違法な長時間労働を許さないための対策に取り組むようになりました。

労働基準監督署の立ち入り検査対象が増える

長時間労働の是正の中でも事業者にとって脅威なのは、労働基準監督署の立ち入り検査ではないでしょうか。労働基準監督署の立ち入り検査が入るためには一定の基準がありますが、政府による働き方改革により、この検査対象基準は企業にとって厳しい方向へと改定されています。

従来の立ち入り検査対象基準は、「ひとりでも月100時間を超える残業が疑われている事業場」であり、該当する事業所には労働基準監督署の立ち入り検査が入っていました。これが「月80時間を超える残業が疑われる事業場」へと変更になり、残業時間数を20時間引き下げたかたちになります。

従来の基準、つまり月100時間超えで検査対象となっていた事業場は年間1万事業場でしたが、月80時間超えに変更されたことにより、検査対象となる事業場は年間2万事業場へと倍増することになります。中小企業からも、「100時間は強く意識していたけれど、80時間となると…」という懸念の声も聞こえてきます。

労働基準監督署の立ち入り検査を甘く見てはいけない

いつ労働基準監督署の立ち入り検査が行われるかは企業側にはわかりません。労働者の申告に基いて行われる申告監督と呼ばれるものもあれば、予告なしに調査が行われる定期監督とよばれるものもあります。特に残業の多さが社会問題となっているような業種業態については、定期監督の重点対象となる場合もあると言われています。

申告監督に基づく立ち入り検査を受けた企業が、再度の通報を受け2回目の調査で改善が認められない場合、ハローワークに求人広告を出稿できなくなるだけではなく、ブラック企業という形で監督署の法令違反企業だと公表されてしまいます。ブラック企業と公表されれば企業のイメージダウンに繋がることは間違いないでしょう。

インターネット上での情報交換が浸透している現状では、監督署からブラック企業であることが公表されると、またたくまに該当企業への否定的な評価が広がることが容易に想像できます。そうなってしまった場合、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被る危険性が高くなります。

残業させられないということは

このようなリスクを避けるために、月80時間を超えないように残業時間の適正な管理および短縮が求められます。これまで生産性や競争力のために長時間残業を見過ごしてきた企業も、長時間の残業をさせられないということになり、より生産性を上げていく取り組みが必要となるでしょう。

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