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事業承継で売手社長の利益を実現するためには?

(写真=ESB Professional/Shutterstock.com)

厚生労働省の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、少子高齢化が進む日本の人口は、約50年後の2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台になると推計されています。人口の減少は国内マーケットの縮小につながり、国内への依存度が高い中小企業は将来への見通しがますます不透明になるのではないでしょうか。

人口減少にともなう後継者不足に悩む企業では、合併や買収(M&A)による「事業(人事)承継」が注目されつつあります。M&Aで事業を継続し、買手のヒト、モノ、カネという経営資源を利用すれば、成長に繋がります。経営者は個人的な保証から解放され、引退後の資金を得ることができます。従業員はもちろん、取引先にもメリットがあるのは大きな利点です。事業承継で売手社長の利益を実現する方法を考えてみます。

中小企業のM&Aで売手社長の利益とは

長年、経営してきた企業や事業をM&Aで譲渡することは、大きな経営判断になります。M&Aを行うに際し、事前に利点と注意点を十分に知っておくことが肝要です。

● 経営者という立場に伴うメリット
売手企業の社長には、経営者(または創業者)としての立場に伴う利益が存在します。売手社長は自ら保有する自社株を譲渡すれば時価に見合う現金を手にでき、引退後の生活費などに充てることが可能です。

保有する株式をすべて譲渡せず、手元に一部残すこともできます。買手企業と共同経営するようなケースです。買手の資金や経営上のノウハウなどを利用する新体制で臨めば、企業の成長を図れる期待も広がります。

自社株の譲渡のほか、自ら会社経営を辞める廃業も可能です。このケースでは、買掛金や借入金などの負債を完済することが不可欠です。

● 個人保証契約を解除できる
一般的に、中小企業が借入れする場合、経営者が個人保証契約をするケースがよくあります。M&Aで売手企業の事業や財産を譲渡すると、会社のための個人保証契約は解除できるため、以後は法的に免責されます。

● 役員で残り経営の引継ぎが可能
売手社長は役員として残り、事業の引継ぎや新たな経営が軌道に乗るまでサポートできます。通常、M&Aの場合には一定期間、引継ぎ目的で何らかの役員や立場で会社に残ることがよくあります。

M&Aが決まれば、元経営者の売手社長がいきなり不在というケースはまずありえません。顧客や取引先、従業員らが不安を抱くからで、売手社長は適切に事業や人事を承継できるように継続して関わることが通常です。

● 従業員の雇用を継続できる
後継者不在で廃業すると、従業員は失業します。人材不足と言われながら、現実には中高年の再就職には厳しい壁が立ちはだかっています。会社に貢献し、支えてくれた従業員や家族を路頭に迷わせることにもなります。顧客や取引先にも迷惑を与え、地元経済への影響も考えられます。

M&Aには、事業を継続できる大きなメリットがあります。また、従業員の待遇面などが極端に下がることも少ないのが一般的です。買手企業としても、譲り受けた企業の社員らが不満を持ち、最悪のケースで退職されると事業の存立さえ困難となる恐れがあります。こういうケースは避けないといけません。

● 新たな事業や企業の成長が見込める
M&Aに取り組む買手企業は通常、財政的に安定し、事業規模の拡大という目的があるのが普通です。買手企業の傘下に入れば、財務面は強化されます。そうなると、今後より一層の成長が期待できます。売手企業の不採算部門の切り離しが目的なら、余った人材やモノ、カネなどの経営資源を採算部門へ集中できることも大きなメリットです。

買手企業のビジネス次第で、新たな販路や商圏の拡大も期待でき、財務の安定化や資金調達も容易になり得ます。

売手社長がM&Aで注意すべき点とは

M&Aで売手社長には利益がある半面、注意点も忘れてはいけません。M&Aには相手が不可欠で、買手企業がないと成立しません。結構時間が必要なケースもあり、必ずしも売手社長の希望通りとは限りません。

買手企業との交渉やチェックには時間と労力が必須です。特に、事前に注意すべきは情報漏洩で、成立前に顧客や取引先、社内で漏れると根拠のない噂が広がります。これはM&A自体や現状にも悪影響を及ぼす恐れがあるので十分な注意が必要です。M&Aを行う場合、確実に成立するまでは慎重な行動が欠かせません。

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