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人事評価制度とはどういうもので、どうあるべきか

(写真=Keepsmiling4u/Shutterstock.com)

「人事評価制度」は、評価に基づき社員を育成して生産性の向上を図り、究極的には企業の目標達成や業績のアップに繋げるためのシステムです。社員を評価するには、社員が持つ能力やスキルだけでなく、会社への貢献度を加味して判断することが重要です。人事評価制度のシステムや用いる基準、中小企業が制度を導入すべき理由を解説します。

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人事評価制度の意義、目的とは

そもそも、企業は何のために人事評価制度を導入しているのでしょうか。賃金を決めるためだけに制度を活用しているのではありません。

●企業のビジョンや経営方針、目標の明示

人事評価制度の評価項目や基準は会社によって異なりますが、制度には会社の理念やビジョン、会社の目指す方向性や会社が求める社員像が色濃く表れます。

企業が成長するには社員の育成が欠かせません。同時に、社員が目指す方向性や目標が、企業のそれと同じベクトル上にあることが必要です。人事評価制度は、最終的に生産性の向上や企業業績のアップにつながるものであることが重要なのです。

●人材の最適な配置や待遇の決定

これまで日本独自の雇用システムとして戦後の復興を支えてきた年功序列型賃金体系や終身雇用制度は、長引く景気低迷や企業のグローバル化など、社会や労働環境の変化に伴い崩壊しつつあります。

現在では年功序列型ではなく、各社が定めた人事評価制度をもとに賃金を決定するようになりました。人事評価制度では従来のように年齢給と職能給の合算で給料を決めるのではなく、客観的に社員の能力や業績、貢献度などを判断し、設定された目標への進捗状況や達成度、担当業務への適合性などを見極め、人材配置や昇給・昇進などの待遇に結び付け、組織内の人材配置の材料にもします。

●社員の人材育成

公平、適正で透明性がある人事評価制度を導入、運用すると社員の会社へのエンゲージメント(貢献度)が高まります。評価の項目や基準が明らかで、成果が適切に昇給や昇進に結び付くことが分かれば、社員は納得して目標や業務の達成に励むでしょう。人事評価制度は社員の成長を促す重要な役目も担っているのです。

人事評価制度の種類とは

企業が社員を人事評価する方法はいくつかの種類に分かれます。社員のスキル、能力や会社の業績、働きぶりから総合的に判断していきます。

●能力評価

業務上求められるスキルや知識などで社員を判断します。どの会社にも共通するような数値化ルールは存在しません。通常、企業ごとに定めたルールに従って評価することになります。

●業績評価

社員の能力や成果を評価期間ごとに判断する方法です。主に成果や目標への達成度を客観的に数値化していきます。数値化しにくいプロセスについては、上司や同僚、部下らからヒアリングして数値化するのが有益です。

●情意評価

社員の意欲や行動、勤務態度などから査定します。担当業務への意欲や責任感、組織協力する姿勢などが評価の対象となります。

人事評価制度を補う評価手法とは

人事評価には個人のスキルや会社の業績、勤務態度などをもとにしますが、それを補う手法もあります。これを用いると社員の意欲向上にも役に立つでしょう。

●コンピテンシー評価

企業や組織で高い成果や業績を上げている社員に共通する行動特性(コンピテンシー)は、人事評価を円滑に進めるために有用です。あらかじめ業績が高い社員の行動特性からパターンを事前にモデル化し、それに沿って行動する社員を評価するものです。コンピテンシー評価では実際に会社に貢献している社員の行動パターンを分析し、目標達成に向けてどういう行動をすれば良いのかが明確になるので、人材育成の面でも有用なものです。

●目標管理制度(MBO)

あらかじめ社員が自主的に目標を決めて会社と認識を共有し、管理していく方法です。設定する目標はなるべく具体的にし、到達するためのプロセスも具体的に定めることも大切です。社員と企業双方の目標が同じベクトルであるかを常に確認しながら、社員が企業に貢献していると認識すれば、さらに意欲を高めることが可能なのです。

●360度(多面)評価

上司はもちろん、同僚や部下、異なる部署の社員が一人の社員を評価する手法です。評価を可能な限り客観的で公平なものにすることが狙いですが、360度評価は、普段評価を担当していない社員が評価に関わります。評価する人が評価に関する知識や経験を持っていないケースもあるでしょう。360度評価は人事評価に反映するというより、本人に評価を伝え、業務に生かすために使うのが一般的です。

人事評価制度が決めるものとは

では、人事評価制度をもとにして、会社側は何を決め、社員に何を与えるのでしょうか。

●行動指針

企業が社員を評価することは、すなわち社員が目標達成に向けてどのように行動すべきかを表す基準を示すものです。

●等級

人事評価は、企業や組織で求められる役割や社員の等級を示すものです。この指針にしたがって会社が社員に求める能力やスキル、役割や業績を示し、かつ序列化するのが等級制度の役目です。

●報酬

評価や等級の各制度を総合し、結果や役割、地位に基づいて給料を決めます。

人事評価制度のポイントとは

人事評価制度は会社がそれぞれに設定した基準をもとにしています。社員に納得させられるように運用しなければ、社員のモチベーションは上がりません。会社が人事評価制度を導入する際の留意点を挙げていきます。

●明確であること

評価する項目や基準、方法や時期が明確で、社員に分かりやすく共有する必要があります。評価項目や基準が社員に伝わっていないと社員がどのように目標設定するか、どういう行動が評価に結びつくのかが分からず、人事評価そのものや企業への信頼性が損なわれる恐れがあります。

●具体性があること

社員が納得できるよう、客観的かつ具体的に評価する必要があります。社員にとって納得できるような評価の「理由付け」をし、社員の今後の行動に結びつけるのが何よりも大切です。根拠が不明確では社員に不信感が募り、企業への貢献意欲やモチベーションが下がってしまいます。

●絶対評価であること

他の社員と比較するのではなく、各社員が設定した目標に向けて一定の基準に従ってランク付けすることが大事です。相対評価を採用している企業も少なくありませんが、社員に対する説得性や納得度が高いのは絶対評価で、近年主流となっています。

●プロセスを重視していること

数値化された結果だけではなく、プロセスにも注目する能力主義も加味するといいでしょう。目的達成に向けてすべき行動が明確になり、行動を評価すれば社員の会社への貢献も高まります。

人事評価制度の変遷とは

日本ではなぜ年功序列型賃金体系から人事評価制度を採用するように変化したのでしょうか。人事評価制度の変遷を説明します。

●年功序列から成果主義や能力主義へ

従来、多くの企業では一般的に年齢や勤続年数に比例して給料や地位がアップする年功序列制度を採用していました。制度が変わらないまま、就職した会社で一生働く終身雇用制度は日本の高度経済成長を支え、戦後の復興を果たす大きな原動力となりました。

その後、長引く景気の低迷や雇用情勢の変化に加え、急速なグローバル化もあり労働に対する考え方は変化し、日本型の雇用システムは衰退の一途をたどっています。人事評価においても、年齢を重ねるたびに評価が高くなる年功序列型のものから、仕事の結果や業績、貢献度などで評価する「成果主義」、プロセスも評価する「能力主義」へと変わってきています。

●非正規社員の格差を是正する同一労働同一賃金

1990年代から日本では非正規労働者が増え、現在では日本の全従業員のうち非正規社員が約40%を占めるようになりました。

ところが、徐々に正社員との賃金格差が広がり、社会問題化しています。政府の方針も成果主義に傾き、2016年12月に働き方改革実現会議で「同一労働同一賃金」のガイドライン案を公表。同ガイドラインは仕事の内容が同じか、同等の社員に対しては同じ賃金を支払うべきだという考え方に基づいています。

●欧米では定期の人事評価を廃止する動き

欧米では近年、期間を区切った人事評価や社員のランク付けを廃止する「ノーレイティング」という動きが注目を集めています。多様な人材や労働環境の急変に伴い、あらかじめ設定した期間に評価することが現場の動きに合わないことが背景にあります。ノーレイティングでは期間を設定せず、必要な時にリアルタイムで目標設定して社員を査定し、フィードバックします。

人事評価制度を導入したときに起こりうる「ミス」は

人事評価制度は導入されるようになってからまだ日は浅く、成熟した制度とは言えません。制度を導入した際に起こりうるミスや、その対処法を紹介します。

●人事評価エラー

評価者が意図的または無意識に心理や感情に影響されて評価することを人事評価エラーと呼びます。人事評価エラーのうち、特に起こしやすく、陥りがちなエラーを整理しておきます。

ハロー効果 学歴などの特徴的な印象に影響され、実際よりも高い評価を付けてしまうケース
寛大化と厳格化 社員に対する私情が影響し、評価が主観的に変化するケース
中心化傾向 極端な評価を嫌い、「社員に良く思われたい」などの理由から評価が平均値に寄りすぎるケース
論理誤差 「良い成績だと積極的だ」などと、結果と過程など異なる項目を同一視して評価してしまうケース
近隣誤差 全体の評価期間を見て評価するのではなく、直近に起きた出来事に評価が左右されるケース
対比誤差 評価基準に基づかず、評価する人自らが持つ基準に照らし合わせて評価するケース

●評価者としての適性

人事評価を担当するには評価できる能力や知識、経験があることが前提です。公平で客観性に評価するためには、企業の定めた評価項目や基準を正確に理解し、適切に判断する能力が必要です。評価者としての適性が欠けていれば評価の価値が下がり、社員の納得や信頼を得ることはできません。

●フィードバック

社員が次のステップを目指すために人事評価の結果をフィードバックすることを忘れてはいけません。社員が納得できるように評価の根拠を示して説明し、今後の業務や次の目標達成に向けて活用してこそ評価する意味があるのです。評価を下した後、フィードバックしてコミュニケーションを取ることは人材育成の面で大きな役割を果たしています。

人事評価制度が中小企業に必要な理由とは

人事評価制度は大企業を中心に採用されていると思われがちですが、中小企業にこそ必要なのです。適切な人事評価制度の導入、運用は中小企業の経営を効率化しうるものです。

人事評価制度を採用した際は

・評価対象の決定
・評価項目の設定
・評価基準の決定
・評価の実行
・評価結果を判断
・評価結果のフィードバック

上のような流れで評価します。

厳しい企業間の競争で生き残るためには、社員がみな同じ方向性を持つ必要があります。正規、非正規を問わず、適切な人事評価制度で社員を客観的に評価し、公平な昇給や昇進に反映させれば従業員の働く意欲が高まり、目標の達成に向けて大きく前進できるのです。

次代のリーダーを見つけ、育てることにもつながるでしょう。これこそが人事評価制度を導入、運用する最大のメリットなのです。

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