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人材が多様化する時代に適した人事制度とは ~株式会社リクルートエグゼクティブエージェント 森本千賀子さん インタビュー後編~

株式会社リクルートエグゼクティブエージェントの森本千賀子さんは、中学2年生と小学3年生の男の子2人を育てる母親でもあります。仕事もプライベートも精力的に活動する生き方は多くの女性を勇気づけ、キャリアや人生に悩む女性役員や女性管理職の方々が「森本さんに相談したい」とキャリア支援を依頼されるケースも多いそうです。

女性役員・管理職比率を上げようとする社会要請もあるなかで、その渦中にいる彼女たちは何に悩み、経営に対して何を求めているのでしょうか。インタビュー後編では、女性活躍をテーマにお話いただきながら、性別・雇用形態・働き方などが多様化する企業組織において、どのような人事制度が必要なのかヒントをいただきました。

【Profile】
森本 千賀子(もりもと ちかこ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント/株式会社morich 代表取締役 オールラウンダーエージェント
大学卒業後の1993年、(株)リクルート人材センター(現:(株)リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手掛ける。現在は、(株)リクルートエグゼクティブエージェントにて、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、キャリア支援に取り組む。
2012年、2013年、2015年とNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。また、放課後NPOアフタースクールや一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズの理事としてソーシャル活動にも注力。2017年3月、株式会社morichを設立し、さらに活動領域を広げる。

「数合わせのダイバーシティ」は、女性たちに見抜かれている。

―「働き方改革」と切っても切れないテーマが、「女性の活躍」です。森本さんに相談をされるようなハイキャリアの女性たちは、今の女性活躍の動きをどう感じているのでしょうか。

森本さん:様々な企業の女性役員・管理職の方とお話をしていて思うのですが、彼女たちは「経営トップのダイバーシティ推進に対するスタンスによって、自分たちのプレゼンスが変わる」と感じているようです。ダイバーシティ推進室を設置したり、育児との両立支援制度をつくったり、女性マネージャーを増やしたりと、各社が様々な取り組みを進めていますが、彼女たちは経営者の本気度を各論の施策で敏感に感じ取っているんです。

分かりやすい例を挙げると、一見すると女性管理職比率が高まっているようで、実態は従来から女性を配置しやすかった人事や総務などバックオフィス部門の責任者に女性を据えているだけというパターン。また、どんなに営業として優秀な女性でも、昇進や育休明けのタイミングでバックオフィスに異動させられるのであれば、個人の能力を正しく評価した人材配置とは言えませんし、そうした道しかないのであれば、本人も「この会社で私がいま以上に活躍できるチャンスはない」とキャリアの天井を感じるでしょう。また、よくある例としてはプレイングマネージャー、いわゆる担当課長や担当部長と呼ばれる「部下なし」のパターン。結局やっていることは同じで、数字合わせのために下駄をはかされたとしか感じ得ないようなケースもあります。

経営トップがダイバーシティに本気なのか、「国や社会の要請だから」と仕方なくやっているのかは、必ず見抜かれます。女性がそれなりのポストに就くのはまだ風当たりも強く、その道へ進むこと自体にリスクを感じている人も多いからこそ、経営トップ自らが力強く推進していかないと、女性たちも前向きにはなれないのではないでしょうか。

―ダイバーシティ推進に成功している経営者は、どんなスタンスで本気度を見せているのですか?

森本さん:ある経営者の方と話していたときに「上手くいっている会社の経営者には共通点がある」とヒントをいただいたことがあります。その共通点とは、20~30代の若い時期に欧州へ海外赴任していること。現地では性別に関係なく優秀な人が重要なポストに就くという考え方ですし、家事・育児も母親の役割ではなく、両親が分担することが当たり前です。

そういった価値観に若い頃触れていた人は、女性の力を心底 信じているし、そもそも性別で区別しません。ダイバーシティ推進の難しさは、こういった一人ひとりの根底にある価値観が影響している気がします。だからこそ「形だけ」だとすぐに見抜かれてしまうんです。

今、重要なポストに就く女性たちの多くは、ちょうど男女雇用機会均等法後に社会に出た第一世代ですよね。法律は変わってもなお「女性だから」と言われたり、重要な話は喫煙室の中で決まるような環境で、それでも頑張り続けられたのは、「あなたならできる、やってみろ」と背中を押してくれた上司やメンターの存在が大きかったと感謝されています。今のダイバーシティ推進も、そんな風に彼女たちの背中を押していくことが大切なのだと思います。

多様な人が集う組織で画一的な評価制度は通用しない。「目標」ではなく「WILL」で会話する。

―ワーキングマザーがより一般的になり、前回お話いただいたパラレルキャリアのような多様な働き方をする人が増えると、従業員のマネジメントはより複雑化し、難易度は上がっていきますよね。「人事評価制度」はどうあるべきだと思いますか?

森本さん:多様な働き方が認められれば、働く時間や環境が一人ひとり異なるだけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイトなどをよりポジティブに選択する人が増え、雇用形態も多様になっていくでしょう。だからこそ画一的な人事評価制度では、いよいよ通用しない世の中になっていくと思います。

少なくとも、時間の長さ(勤務時間)をもとにしたマネジメントでは上手くいかないと思いますし、単純に目標管理を目的にした人事評価は、多様な事情・価値観を持つ人が集まる組織では不都合が多くなるでしょう。

だからこそ、経営層やマネジメント層のみなさんが大切にすべきなのは、個人が仕事を通して何を成し遂げたいのかという強い意志「WILL」だと思います。ただ会社の目標を個人ミッションに振り分けていくだけでは、それを達成する動機が生まれにくいですよね。人は、自らがやりたいと思うWILLに向き合ったときには、とてつもないパフォーマンスを発揮するもの。「Aさんという社員をどう評価するのか」ではなく、「企業の人的資産であるAさんの価値を、どう最大化するか」という視点で制度設計していくことが有効だと思います。

―評価するための制度ではなく、個人が成長し、企業とwin-winであるための制度が必要だということかもしれないですね。

森本さん:WILLは、人生を積み重ねることで変わっていくこともありますから、日常から意識して会話をすることが大事です。そうすれば、その人のWILLによってアサインする仕事が変わっていきますし、個人にとって意味のある成功体験を積み重ねることができ、個人の価値はどんどん高まっていきます。ぜひこの視点で新しい時代の評価制度を考えていただきたいです。

―女性活躍に関する話題から人事評価制度に至るまで幅広くヒントをいただき、ありがとうございました。

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