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「ちょっと緩める」だけで、働き心地は劇的に変わる―Chatwork山本社長インタビュー(前編)―

ビジネスチャット「Chatwork」の導入企業が20万社を突破(2018年11月時点)。新たに「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを掲げ、働く環境の向上を支援しているのが、Chatwork株式会社です。同社はそのビジネスの性質上、自社の働き方や人事制度においても“一歩先行く”取り組みを行っていることでも有名。そこで今回は、山本正喜社長に、制度設計や働き方の考えについて伺いました。

【Profile】
山本 正喜(やまもと まさき)
Chatwork株式会社 代表取締役CEO兼CTO
1980 年生まれ。電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中より兄とともに、EC studio(現Chatwork株式会社) を2000 年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。Chatworkをビジネスコミュニケーションにおける世界のスタンダードにすべく、全社を挙げて取り組んでいる。2018年6月、同社の代表取締役CEO兼CTOに就任。

■人事制度の根幹にある考えは、「内側から幸せの輪を広げる」

――Chatwork社では、“お部屋探し支援制度”や“出産立ち合い制度”といった、ユニークな制度を数多く導入して、社員のワークとライフの両方を支援しています。このような制度はどのような考えではじまっているのですか?

実はほとんどの制度が、現場社員の発案なんです。当社では、創業期から“ランチトーク制度”と呼ばれるランチ代支給制度があるのですが、これは仕事上での悩みや相談を役員やマネジャーにしたいときに、業務環境から離れてざっくばらんに話すことを後押しするのが目的。ランチトークの際に「こんな制度があったら良いのに」と要望が上がるときもありますし、「実は最近〇〇に悩んでいて」と打ち明けられたことをきっかけに制度をつくったこともありますね。

変わり種では、エンジニアが仕事の特性から目の疲労を訴えたので、その日のうちに目に良い栄養食品を会社で用意して無料で支給したことも。導入当時は物珍しさから大人気だったんですが、そのうちみんな飽きてしまって廃止しましたけどね(笑)。

――社員の声をもとに人事制度や労働環境を整備されてきたのは、どのような意図があるのでしょうか。

当社は、2000年に兄(前CEOの山本敏行氏)と私で創業したのがはじまり。当時の私はまだ学生で、社会人経験もなければ「会社」が一般的にどういう仕組みでまわっているのかもよく分かっていませんでした。そのため、手探りながらもふたりで目指していたのは「自分たちが(社員として)入りたい会社をつくる」ということ。この考えを制度設計の際に検討・判断する基準にしていました。

また、身近な人の幸せなくして社会を幸せにすることはできないというのも、私たちが大切にしてきた考え。自分自身が幸せになれないならその仕事は続けられないし、家族を不幸にしてまで働くのも違いますよね。まずは自分や家族を幸せにして、友人、職場の仲間、地域の人たち…と幸せの輪は内側から広がっていくもの。顧客を幸せにしたいなら、まずは社員の幸せを追求するのが鉄則だと思っています。

■リモートワークは推奨するのではなく、働き方の「選択肢」

――人事制度に関連して働き方についても教えてください。ビジネスチャットツールである自社サービス「Chatwork」を活用しながら自由な働き方をしているイメージがあるのですが。

たしかに私たちはチャットを活用したコミュニケーションが当たり前になっており、そのおかげで距離の離れたオフィスのメンバー同士がチームになっても大きなストレスなく仕事を進めています。

また、全員がほぼリモートワークというチームもあるのですが、きちんと成果が出ているのは、どんな些細なこともチャットに書き込んでログを残しているから。これは情報共有を徹底する意味もありますが、それと同じくらいに「遠くにいても一緒に働いている気配を感じる」ことの効果が大きいです。相手が見えないとどうしても心理的な壁が生まれるものですが、まるで隣の席で働いているかのように仲間の声が聞こえてくる状態をつくることで壁が取り払われ、気軽に相談しあえる状態がつくられるのです。

このように距離や場所の制約なく働ける環境を整え、「社会の一歩先の働き方」を模索し続ける企業でありたい一方、意外に思われるかもしれませんが、私たちは働き方を完全に個人へ委ねる「自由な働き方」を目指している訳ではありません。仕事の特性や個人の性格によって在宅ワークの向き不向きはありますし、本来はオフィスこそ最も仕事をするために適した環境であるべきです。

だから、私が考える理想の働き方とは、究極に自由な働き方というより従来型の働き方を「ちょっとだけ緩めた」状態。選択肢を少し増やすだけで、育児や介護による突発的な出来事に対応できるのはもちろん、たとえば「台風が近づいているから今日は在宅に切り替える」など柔軟に合理的な判断がしやすくなります。

また、フルリモートワークをよっぽどの事情がない限り推奨していないのも、オフィスで顔をあわせて会話をするアナログさを大切にしているから。デジタルな環境では伝わりづらいエモーショナルなコミュニケーションが、仲間同士で信頼を深めることや創造的なアイデアを深めるためには必要なはずです。私たちはそうしたアナログの価値を失いたくないからこそ、デジタルで効率化できる部分は徹底し、そこから生み出された時間を人にしかできないことに注ぐという発想を大事にしています。

――インタビュー後編では、「日本一働きたい会社」に選出された道のりや、「Chatwork」を企業へ導入するなかで分かった、「働き方改革」を成功へ導くセオリーなどを伺いました。次回もお楽しみに。

働き方改革は小さくはじめるのが鉄則!?―Chatwork山本社長インタビュー(後編)―