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個人が主役の経済で、企業はどうあるべきか。~クラウドワークス吉田社長 特別講演 後編~

(株)クラウドワークスの吉田社長による講演レポートの後編では、同社が掲げる「クラウド経済圏」が話題の中心です。企業と個人の上下関係がなくなり、フラットかつ個人が主役になっていくのが、これからの時代。企業はどのような姿勢で個人と向き合うと良いのでしょうか。講演の後半では、経営者としての吉田社長自身の体験談も交えながら、お話いただきました。

【Profile】
吉田 浩一郎(よしだ こういちろう)
株式会社クラウドワークス 代表取締役社長兼CEO / 新経済連盟 理事
1974年兵庫県神戸市生まれ。パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として 東証マザーズ上場を経験した後に独立。事業を拡大する中で、ITを活用した時間や場所にこだわらない働き方に着目、2011年11月に株式会社クラウドワークスを創業。翌年3月に日本最大級のクラウドソーシングサービス『クラウドワークス』を開始、「”働く”を通して人々に笑顔を」を ミッションとして事業を展開。2014年12月東証マザーズ上場。2015年には、経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」審査委員会特別賞(ワークスタイル革新賞)を受賞、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞。2016年には、一般社団法人新経済連盟理事に就任。著書に『クラウドワーキングで稼ぐ! -時間と場所にとらわれない新しい働き方(日経新聞出版社)』『クラウドソーシングでビジネスはこう変わる(ダイヤモンド社)』などがある

前編:変わる。個人と企業の関係性。~クラウドワークス吉田社長 特別講演~

■クラウド経済圏によって、可能性の広がる社会。

ここからは、クラウドワークスの中期経営計画でもある「クラウド経済圏」についてご紹介いたします。

そのために、前提としてクラウドワークスの目指す世界についてお話させてください。私たちのミッションは、「“働く”を通して人々に笑顔を」。私自身は叩き上げの営業マンで、とにかくノルマ達成のために働き詰めで、ぎっくり腰になっても休めないような昭和の働き方を経験してきました。そんな日々のなかで、働くことで笑顔にならなければ意味がないと思うようになったからこそ、このミッションを掲げています。

ミッションに対するビジョンは、「世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる」ということ。私たちは、インターネットを通して世界中に就業を届けます。それによって、これまでは働くことができなかったような人も含め、たくさんの人が報酬を受け取れることを実現しようとしています。直近では、通期累計で53憶円の報酬を届けることができました。これは年収500万円換算すると約1,000名分。私たちは、バーチャルに1,000名規模の社員を持つ会社になったとも言えます。

個人に対して価値を提供しているように、仕事を発注する側の企業もこれまでに23万社がクラウドワークスを利用しており、新たなアウトソーシング先として認めていただいています。意外に思われることも多いのですが、誰もが知る大手メーカーや金融機関から個人に発注いただいている場合も日常的にあります。だから、こういう側面でも個人に信用力がないという時代の終わりをご理解いただけるかと思います。

では、具体的に「クラウド経済圏」についてお話いたします。クラウド経済圏は、シェアリングエコノミー市場とFintech(金融×テクノロジー)市場の両輪で拡大していくことを目指しています。つまり、シェアリングエコノミーで報酬をつくり出すと同時に、個人の社会保証や信用をFintechで提供していくという戦略。これは、20世紀における企業が個人に保証していたものである、「仕事」「報酬」「信用」といったものをインターネットにリプレイスしていくことに他なりません。企業に勤めなければ、個人はクレジットカードもつくれず、住宅ローンもまともに組めないといった20世紀型の構造は、企業が主役の経済でした。しかしクラウド経済圏は、インターネットによって個人が主役となる経済。ITによって企業にしかできなかったことが個人でも可能になり、シェアリングエコノミーが活性化し、新しい市場を広げていきます。

こうした私たちの考え方に共感いただき、自治体から地方創生の一環で当社にお声がけいただいているのも特徴です。つまり、クラウドソーシングは働く場所に関わらず仕事をやり取りすることが前提のため、場所を原因とする雇用課題・地域課題とは相性が良いのです。たとえば、神戸市とは「多様な働き方推進事業」として、クラウドワーカーを100人生み出す取り組みを2年かけて行っています。他には、託児施設付きワークスペース「ピーカブー広島」と提携した取り組みでは、子育て中のお母さんが子どもを預けながらクラウドワーカーとして働ける環境を構築。利用者が増えたことで助成金なしで施設が運営できるようになり、現在2件目の施設を建設中という状況です。このように、時間と場所に捉われない働き方が可能になると、これまで働けなかった人たちが働きはじめ、経済が活性化するという効果が期待できます。

もちろん、共感の声は企業や自治体だけではなく、クラウドワーカーである個人からも沢山いただきました。「自分のペースで働くことができるようになって、毎日が充実した」「大好きな仕事だけをして暮らしていけるなんて、晴れ晴れとした気持ち」と、色んな方々に新しい働き方を提供しており、とりわけ地方にいる個人を照らす新しい光となっています。

また、シニアワーカーはお金を稼ぐということだけでなく、社会と繋がって何かをして誰かから感謝されるということに喜びを感じていらっしゃいます。女性ワーカーは、やはり時間と場所に捉われずに働けることで、両立を実現できたという声も沢山いただいています。

■社員のエンゲージメントは、経営者自身の信念や自信が左右する。

このように「“働く”を通して人々に笑顔を」というミッションのもと、クラウド経済圏の拡大を進めている状況ではありますが、最後にお伝えしたいのは、ここに至るまでにあった私自身の失敗と、心の変化です。

実は、私はかつてクラウドワークスをはじめる以前に、ひとつめの会社を畳むという苦い経験をしています。会社を立ち上げたものの事業は鳴かず飛ばずで、役員は全員辞め、一人で1億円の在庫を抱えたのが36歳の時。自分はなんて能力のない人間なんだろうと打ちのめされました。そんなとき、かつての取引先からお歳暮が届いて無性に嬉しかったんです。お歳暮という一種の感謝の印を目の前にして、ようやく気付きました。それまでの私は、ただ売上と利益しか見ておらず、事業に夢も想いもなかったことに。誰かの役に立って、ありがとうと言われる仕事こそ意味があると気づかされたこの出来事は、クラウドワークスにも流れる考え方の原点です。

また、心を入れ替えてクラウドワークスを創業して2年の間、休まず必死に事業に向き合い続けていると、実感したことがあります。それは、社長の心の持ちようは経営に直結するということ。自分自身が一点の曇りもなくクラウドワークスを絶対に成功させるという気持ちでいると、どんどん応援団が増えていきました。創業1年後に3憶円を調達、2年後に11憶円を調達し、3年後に東証マザーズ上場を実現したのは、クラウドワークスを応援いただけるような共感の輪が広がった結果だと思っています。

ところが、その後も私は失敗をしています。上場による急拡大を急ぐあまりに社員の不安や組織体制の不具合に目を瞑ってしまった結果、役員や社員のエンゲージメントは急低下。社長は信用できないと面と向かって言われて激しく落ちん込んだことだってあるんです。でも、そうした本音を真摯に受け止めて、改善していくチャンスをもらえたから今があります。役員や社員の率直な意見が、私自身もクラウドワークスも成長させてくれたのは間違いありません。

このように、失敗から学んだことの多い私ですが、いまだって確固たる正解にたどり着いている訳ではないですし、暗中模索の日々です。

ただ、敢えてエンゲージメントを挙げる秘訣を述べるとすれば、それは私自身が自信をもつこと。当たり前ですが企業経営に必要なのは、自己変革と自信を持つことのバランスです。私はクラウドワークスを創業して7年目になりますが、振り返ってみると過去6年間は自分に自信がなかったのです。

社員を率いて事業を成長させるためには、経営者自身が自社の事業が大好きだという姿勢で、みんなに示すことではないでしょうか。もちろん、それが過度になると傲慢になっています。自信と変革をいったりきたりしながら、前進していくのが、大事なんだと今の私は思っています。

多岐に渡るお話をさせていただきましたが、本日は以上になります。ご清聴ありがとうございました。

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